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梶谷通稔氏はビルゲイツの試験に受かるか? ~ 「スマート」な解き方?これが?

その119 数学のセンスを試す

・・・
設問119
あなたと友人の2人でコイン投げゲームを始めます。まずあなたがコインを投げ、表が出たらあなたの勝ちとなり、ゲームはそこで終了します。もしも裏が出たら、今度は友人がコインを投げます。そこで表が出たら友人の勝ちとなり、ゲームは終了します。このようにして、表が出たらゲームは終了し、裏が出たら投げ手を交代するという形でゲームを進めるとき、あなたが勝つ確率はどれくらいになるでしょうか。ただし、コインの表と裏の出る確率は、それぞれ50%とします。

 どうでしょうか。設問を見た瞬間、そんなのわかるわけがない、と戸惑った皆さんもあったかもしれません。
 というのも、「この両者の間で、コインの裏が永遠に出続くことだってあるわけだから、どうして確率などわかるのか」という観点からの戸惑いです。

 しかし、この永遠に続くことも起こり得るということが、実は解法の糸口を与え、また正解へと導く重要な手がかりを与えてくれることになるのです。
以下の説明を見ていく中で、それがわかってきます。


この勝負で、さらにどんどん先に進む状況というのは、あなた:裏(1/2)で、次に友人も裏(1/2)のパターンが続くということです。
 つまりあなたが勝つのは、この1/2 x 1/2 = 1/4の繰り返しのあとで、あなたに表が出るという1/2を掛けたもので、したがってあなたが勝つまでのそれぞれの回には、この1/4のべき乗に1/2を掛けた規則性のある数列ができるということです。

 つまりあなたが勝つ確率は、この数列の和になりますから、n回目であなたが勝つ確率をA(n)とすると[原文ママ(※)]
 A(n)=1/2+1/2x(1/4)+1/2x(1/4)2+1/2x(1/4)3+ ・・・ +1/2x(1/4)n-1 ・・・(1)
になります。

 この式で、1/2=a、1/4=bと置き換えして表現すれば、
 A(n)=a+ab+ab2+ab3+ ・・・ +abn-1 ・・・(2)のような一般式となり、その規則性がはっきりとわかります。これは、初項がa、公比がbという等比数列項目の和で、これは高校数学で学ぶものですが、そのようなことを知らなくても解けます。

 そこで、n回目であなたが勝つ確率を求めるには、式(1)のnに具体的な数値を入れれば計算できますが、設問にはnの数値などはありません。
 ここで前述したこと、「永遠に続くことも起こり得るということ、それが正解へと導く重要な手がかりを与えてくれる」が、或ることを示唆してくれます。
 つまり、A(n)のnを∞にすると、ある数値に限りなく近づいていくのではないかということです。

 実際に式(1)でnを∞にしても計算が複雑になるだけですが、置き換えの式(2)を工夫して使うと、その導き方がわかってきます。
 つまり式(2)の左右にbをかけると、
 bA(n)=ab+ab2+ab3+ ・・・ +abn ・・・(3) 
です。
 そして式(2)から式(3)を引けば、
 A(n) - bA(n) = a - abn で、結果、A(n)=a(1-bn)/(1-b) となり、
ここで具体的な数値a=1/2、b=1/4を代入すれば、
 A(n)=1/2{1-(1/4)n}/(1-1/4) 。
そして nを∞にすればいいわけですが、そこでは(1/4)n → 0になっていくので、結局、 
 A(∞)=2/3という数値が導かれます。

 当設問の背景は、永遠に続くこともあるこの設問に対してお手上げすることなく、だからこそ解答はある数値に近づいていく(敢えて専門用語を使えば収斂する)のではないかと、いかに早く気づくか、またさらにその解法のスマートはどうか、そこに数学の感性とスピードを見ようとしているものです。

 それでは設問119の解答です。

正解119
2/3。(解き方の説明を求められれば、求める確率は式(1)のような規則性のある数列の和になることを述べ、そのnを∞にすればいいことから、式(2)と式(3)を使った結果を示せばよい)


(※) 「n回目であなたが勝つ確率をA(n)とすると」は 梶谷氏の間違い。
(※) 正しくは、
(※) 「n回目までにあなたが勝つ確率をA(n)とすると」


梶谷氏の「正解」の、あなたが勝つ確率:2/3、は正解ですが、
その「解き方の説明」は 御世辞にも「スマート」とはいえませんし、
「そこに数学の感性とスピード」があるようにも見えません。
で、
私の回答は、こんな感じ

 ①貴方がコインを投げ、
  a. 表が出たら(1/2)、貴方の勝ちとなりゲームはそこで終了。
  b. 裏が出たら(1/2)、
    ②今度は友人がコインを投げ
     a. 表が出たら(1/2)友人の勝ちとなり、ゲームはそこで終了。
     b. 裏が出たら(1/2)、①から繰り返す

 これを1ステージとする(カッコ内は確率)。

 n回目のステージで決着が着いた、とすると、
 「貴方が勝って決着がついた」と「友人が勝って決着がついた」の比は、

  「貴方が勝」:「友人が勝」 = ①のa : ②のa
  「貴方が勝」:「友人が勝」 = 1/2 : 1/2 x 1/2
  「貴方が勝」:「友人が勝」 = 2 : 1

 これは何回目のステージで決着が着いても言える事。
 よって、あなたが勝つ確率は、2/3。

あるいは、
「コインの裏が永遠に出続くことだってあるわけだから」というのが、
どうしても気になる方には、こういうの、

 あなたが勝つ確率:
  A(∞) = 1/2 + 1/2x(1/4) + 1/2x(1/4)2 + 1/2x(1/4)3 + ・・・ + 1/2x(1/4)
  A(∞) = 1/2 x ((1/4)+(1/4)2+(1/4)3+ ・・・ +(1/4))

 友人が勝つ確率:
  C(∞) = 1/4 + 1/4x(1/4) + 1/4x(1/4)2 + 1/4x(1/4)3 + ・・・ + 1/4x(1/4)
  C(∞) = 1/4 x ((1/4)+(1/4)2+(1/4)3+ ・・・ +(1/4))

 とすると、
 A(∞) + C(∞) で、全ての決着の仕方(何ステージ目でどちらが勝ったか)を
 網羅することができる(つまり、A(∞) + C(∞) = 1 )ので、
 あなたが勝つ確率は、
 
 A(∞) = A(∞) / (A(∞) + C(∞))
 A(∞) = 1/2 / (1/2 + 1/4)
 A(∞) = 2/3

このように、
「永遠に続くこともある」からといって、必ずしも、「解答はある数値に近づいていく(敢えて専門用語を使えば収斂する)のではないか」と「気づく」必要がある訳ではありません。
項がだんだん小さくなっていく無現級数が出てきたら、とにかく その収束値を求めようとするのは、
なんとかの一つ覚え というものです。



【関連記事】
 ・梶谷通稔氏はビルゲイツの試験に受かるか?~ 「あなたはビルゲイツの試験に受かるか?」より
     ・ 梶谷通稔氏によるモンティ・ホール問題の なんじゃそりゃ解説

     ・ 「スマート」な解き方?これが?
     ・ 奇怪な思い込みから問題の不備を疑い、余計なことまで考えて、結局は間違える
     ・ 問題の本質は掴まず、とにかく定番の解法に頼る

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